ついに「どん底」に行った。
この店のことを知ったのは、どのくらい以前のことかもうわからない。
この新宿3丁目にある「どん底」は……そう新宿3丁目というのが既に憧れの地なのであるが……作家の三島由紀夫や映画監督の黒澤明が通った飲み屋として有名な店だ。
そういう惹句に、俺はすごく惹かれる種類の人間なんです。
店先にそういうことがアピールされていて、やや“あざとい”と思わなくもない。
だが、そういうことを目当てに俺が引き寄せられたのは間違いない。
いわゆる“文壇バー”的なものに俺は憧れがあって、だから観光地化したゴールデン街にもいまだに憧れを抱いたままだし、また新宿3丁目というのも作家や編集者や、映画に関わるスタッフが通った店があるとかで憧れは拭い去れない。
憧れのひとつの象徴が「どん底」だ。
新宿とかゴールデン街で飲むことは今まで何度もあったが、どうにも「どん底」には行けずにいた。
行ってみてガッカリしたら、という恐れもあって行けないでいたという部分もある。
が、店というのは、いつか無くなっても不思議ではないから、いよいよ行ってみる決心をした。
週末の夜だから、すっごい客入り。
ドアを開けた瞬間に、とても入れそうにない様相だと判った。
が、入り口そばキャッシャーの人がフロアスタッフに確認して地下に席があると案内してくれた。
狭い暗い階段へ地下へと降りて“どん底”感が増すね。
店内は、いい感じに穴蔵というか倉庫というか、地下だけど屋根裏部屋って雰囲気もあり、良い。
ちなみに画像は客の入れ替わりの狭間の一瞬で撮ったもので、終始満席状態だった。
ちょっとカウンター席は窮屈だが、座れてよかった。
まずビール、サッポロラガーがあって嬉しい。
スタッフにビールは何があるか訊いての注文だったが、あらためてメニューを見ると生はプレミアムモルツか。
赤星を注文してよかった。
突き出しが出てきた、いわゆるカナッペって言っていうやつかな。
これが、昭和気分を高めてくれる。
パーティーでカナッペを軽くつまむなんてのが、昭和世代の憧れのひとつだった。
小腹が空いてたんでチリンコンカンを注文、600円だったかな。
辛さマイルドな、とがってない味。
これをお供にデュワーズをハイボールで。
創業1951年(昭和26年)という大変な老舗だが、若い世代で賑わっていた。
懐古趣味の老人ばかりが、昔を懐かしんで集う店ではない。
そこが良い。
いつの時代も、若者が集まって賑わう熱気が、人を惹きつけるんだと思うなぁ。
文士や映画人も、そういう熱気に魅せられて通ったんだと思う、たぶんね。
今も良い店だね「どん底」。
↓「食べログ」での店舗情報
どん底 (ダイニングバー / 新宿三丁目駅、新宿御苑前駅、新宿駅)