電車に乗って江戸川区へ移動。
乗り継いで都営新宿線で一之江まで。
ここはぜひ行っときたいな、という店があった。
しかしまぁ一之江駅からけっこう遠いね、途中何度か俺は通り過ぎてはいないかと不安になったよGoogleマップでは徒歩10分と表示されるが地味な住宅街を歩くと遠く感じるね。
そんなこんなで「大衆酒場カネス」へ。
創業昭和7年らしい、めちゃくちゃ長い歴史のある店だが、案外その外観はノスタルジーを感じさせるとか風格のある造作とかでなく、素っ気ない。
町の食堂っていう感じだね。
ガラガラと引き戸を開けて店に入ると、おっ、床は土間だ。
土間ってイイよねぇ。
大きなコの字形のカウンターがあり、カウンターの中は厨房ではなく、なんだかよくわからない広い空間。
その奥に厨房がある。
土曜の13時台、ランチの客で慌ただしいでなく、ゆったりのんびり感。
常連であろう一団が酒盛りをしていて、他には俺と同じように他所から訪ねてきたらしい独り客。
女将が接客を、ご主人が厨房を担当し、大女将もいらっしゃって接客をサポートしている……というかマスコットのような存在として馴染み客を癒している様子。
此処まで辿り着くための移動を労い、まずビール。
キリンラガー瓶があって嬉しい。
アテに、にしん蒲焼きを注文してみた。
それにしても、外観はアッサリだが中は素敵だ。
これは、昔は店の前にトロリーバスが走っていたそうで、その頃の記録。
なんだかすごく、歴史を感じるし、大仰に過去の遺物を保存しようってんじゃなく、ただ記念の品を大事にしているって様子で良いね。
現代のものと違い、一の桁の玉が5個あるそろばんも、割と最近まで大女将が使っていて現役だったと。
役者絵のようなのが気になり、あれは何ですかと訊くと、地域の商店や会社から贈られたものだそうで。
昔は、なにかの記念として、こういう絵を贈る習慣があったそうなのね。
なかなか素敵なプレゼントじゃないか。
さて、にしんの蒲焼きは、まだきていないのです。
いろんな話を伺っていて、楽しくビールを飲んでいたが、さすがにオーダー通ってるのか確認してみた。
確かにオーダーは受理されてたようだが、でもちょっと忘れられていたようだ。
が、そういうのが全く気にならないユルい空気なんだよね。
ようやく出てきた、にしん蒲焼き。
小骨が気になったがポン酒がすすむ味だなと、ポン酒を注文。
俺より先にいた団体の中に「男はつらいよ」の寅さんコスプレの人がいた。
どうやら地域では寅さんコスプレの人として認知されている“ご町内の”レベルのローカル寅さんタレントなんだろうと思う。
そして店のことを雑誌やネットで見て行ってみようと思ったであろう先客もいて、俺も同類になる。
どんな客が来ても、普通に接する姿勢が良いなと思った。
老舗の風格を保たなくちゃとか、そういう気負いみたいなのは一切見えてこない、それが良い。
いつも独り飲みの俺には珍しく、ここでは旧知の人間と合流した。
だから珍しく2時間くらい店にいたかな。
心地良い時間だった。
合流者が注文した〆鯖もウマかったな、しっかり締めてある系で旨味が酒をすすませる。
最後に、ラーメンを注文した。
ああ、これか、これが昔ながらの東京のラーメンか、という見た目が嬉しい。
九州に住んでいる者には、これはなかなか食べる機会のないラーメン。
味は、正直それほどピンとこなかったんだけどね、楽しめた。
あの伝説の大衆酒場! 昭和の記憶を刻む名店!
みたいな、そういう大げさが全然なくて、ユルっとした店で素敵だね。
末永く、ありのままで店があったら良いなと思ったよ。
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