関東飲み歩きの最後の日で、午後には成田から安っすいLCCで地元に帰らねばならない日だった。
そうであっても、朝から飲める店があって飛行機の時間まで手持ち無沙汰にならないのが関東や関西の素敵なところだ。
俺には、ぜひとも寄りたい店があった。
東京スカイツリーってやつを眺めた。
もちろんそれを見たかったわけじゃないんだな。
とうきょうスカイツリー駅から歩いてすぐのところに、前日26:30から、すなわち当日早朝02;30から開店の店があるって情報をネットで拾っていた。
「菊屋」という店。
とうきょうスカイツリー駅の周囲は、とってつけたように誂えられた観光客しか来ないような温いスポットであったが、そこから数分歩くと、昔ながらの生活感に溢れた庶民エリアだった。
そこに「菊屋」は、たぶんずいぶん昔から在るんだろう。
なんかもう、外観がたまらない魅力。
飲み屋というわけではなく、深夜にメシが食える店なんだなというのが貼紙から判る。
26:30からメシを食いたいという需要が、そりゃ東京ならあるよね。
ところで、とにかくカレーをプッシュしてるんだなぁ。
カレーについての貼紙が何種類も貼ってある。
ま、俺は酒を飲みに来たのだが。
店内は、土間で、安いテーブルと椅子が並んで、安っぽい食堂然としていた。
そして暖かかった。
石油ストーブがたかれていた。
オッチャン店主が迎えてくれて、俺は独り客だからカウンター席を求めるところだがカウンターはないのでテーブル席に座った。
独りでテーブルに座るのは客の回転率を下げることになると思い普段は避けるのだが、俺が立ち寄った平日10時台に、そんなに先客はなかったし、いいかな。
先客はみな常連のようで、小上がり近くのテーブルのほうに集まっていたので、邪魔にはならないようだったし、先客の客層を見ると今からランチタイムに向けて混む店ではないようにも思えたし。
まずホッピーをお願いして、ひとごこちついた。
こういう、東京の昔ながらの下町の庶民の店ってところで飲んでこそ、ホッピーはうまい。
そう思うのは、俺がホッピーに馴染みがない九州の人間だからかもね。
アテに、肉豆腐を。
東京で肉豆腐つったら牛肉だろと思ったら、予想外に鶏肉だった。
でもうまいんだなこれが。
そんで、酒のアテにと思ったのに予想外にたっぷりなボリュームだった。
うん、ここはメシ屋なんだなぁ。
(鶏)肉豆腐の量が多いので、ホッピーの中をおかわり。
そうやって腰を落ち着けると、オッチャン店主とも会話を交わす。
気取りのないオッチャンだ。
店内を撮っていいか訊くと快諾してくれた。
とても、味わい深い、あちこち細部まで。
パシャパシャ撮っていると、こっちも撮ればと言われた。
小上がりで、勤務を終えて此処で飲んで寝てしまっているタクシー乗務員があって、その様子を撮れとオッチャン店主が言うのだが、それはさすがにプライバシーとか個人の肖像権がアレなのでやめておいた(笑)。
それはそうと店内はストーブで暖かいと書いたが、あまり換気が良くなくてストーブ燃焼臭がしていて、寝ているタクシー乗務員は一酸化炭素中毒になりやしないかと少し心配になったが、まぁ平気だろう。
ストーブ燃焼臭よりも、カレーの匂いのほうが強くて魅力的だった。
外にさんざんカレーの貼紙があったが、店に入ると同時にカレーがいい匂いだ、食いたいなという気持ちになっていた。
飲みに寄ったんだからからカレーはいいやと思っていたが、その誘惑には抗し難かったね。
カレーを頼んだ。
ぼってりとした、家でハウスとかS&Bのカレールーを使って作るようなカレーだった。
これが、ものすごくうまかった。
貼紙で、やたら“辛い”とアピールされていたが、実際なかなか辛かった。
ところでカレーには豚肉がはいっていて、予想外だったな。
具沢山で、基本的に素朴な味だが、じっくり美味しさが煮込まれたようなカレーだった。
カレーライス、これが300円だ。
なんて素晴らしい。
そんなこんなで、長居した。
ちょっと寄って様子を見て酒をひっかけるだけのつもりだったのにね。
店内BGMに、CSだかケーブルTVだかのカラオケチャンネルの伴奏だけのだかなにかが流れていて、そういう、どうでもいい感じも居心地が良かった。
けっこう話好きのオッチャン店主もウェルカムに迎えてくれたし、先客常連諸氏も距離感を保って絡んでくれる
空気だったのも心地よかった。
店そのものの佇まいも魅力があり、また此処がスカイツリーとやらの至近にあることも異空間な感じもして楽しい。
とても良い店だ。
実は、今回の関東飲み屋りで、ここが一番好きになった。
またきっと、必ず立ち寄りたい。
本当に素晴らしいよ、「菊屋」。
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↓「食べログ」での店舗情報
菊屋 (定食・食堂 / とうきょうスカイツリー駅、押上駅、本所吾妻橋駅)