滅多に行くことのない空港周辺をウロウロしてたら、思いがけない巡りあいがあった。
えっ、なに? って不意に目にとまったブキミな存在。
それが人形だと判別できるまでの数秒、奇妙な違和感に捉われてしまった。
正常な判断力を取り戻すと、そこは酒屋だということが認識できた。
糟屋郡志免町御手洗の「丸山酒店」という店。
外観全体を視野に入れると、なんとも昔ながらという風情のある県道沿いの酒屋って風情。
で、この店、角打ちができる店なんだな。
窓越しにカウンターが誂えてあるのが見えたし、店先に“角打コーナー”と看板が出ていた。
まったくノーマークだった店に、ばったり巡り合ったという喜びがあった。
ここら辺りのエリアに角打ちできる酒屋があるって情報は、まったく拾ったことがなかったので、不意をつかれたと言いたいほどの意外性があった。
その意外さは、もちろん嬉しい。
さて、角打ちできるなというのは間違いないようだが、はてさて飲めるのか今、というのは確証はなかった。
月曜の12時台だったんだよ、ここを通りすがったのは。
夕方からしか角打ちできませんという酒屋も少なくはないので、今は駄目かもしれんと思った。
そう思いながらもガラガラとサッシの引き戸を開けて店内に。
狭いが趣のある店内には、先客はおろか店の人の姿もなかった。
こんにちは、すみません、と何度か声をかけると奥から女将さんが顔を出してくれて、ここって角打ちできるんですね、いま飲めますかと訊くと穏やかに迎えてくれた。
冷蔵ショーケースを物色してキリン一番搾りの瓶を。
キリンラガーやサッポロ黒ラベルは置いてなくて残念だったが、一番搾りは許容範囲。
生ビールのサーバもあると案内されたが、麦とホップだったので遠慮しておいた。
俺はこの辺りで見かけない顔の、あやしいヒゲのオッサンであるはずだが、女将さんは来るもの拒まずという空気で相手をしてくれた。
こちらでは調理したアテを用意していて、品数もけっこう多い。
メニューを記したホワイトボードの下には亀が二匹、水槽の中でやたら元気そうだった。
その下には二層式のシンクがあって、なるほど料理を出す許可をちゃんと得ているのだと判った。
スパサラ100円。
こういうの、ほんとちょっとだけ口にできるのっていいね。
店先のブキミなオブジェのことを訊いてみると、近所で営業していたバイク屋さんが廃業のとき、譲られたのだと。
バリ島の人形とのこと、なるほどブキミさに納得。
店のアピール、地域のランドマークになっているようだ。
しかしまぁ、夢に見そうにブキミな顔だなぁ。
それにしても、平日昼間から角打ちできる酒屋が思わぬ場所にあって、そこにたまたま巡り合った喜びは大きい。
こう言ってはなんだが、エリア的に二度とは立ち寄らないかもしれない。
が、そういう場所にも角打ちできる酒場があって、俺みたいなマニアには関係ない地平で地域の人に愛されて続いているっていうのが良いなと思った。
「丸山酒店」福岡県糟屋郡志免町御手洗2-13-13