コーヒー好きなら行ったほうがいいですよ、と飲み屋のマスターにお勧めされた店に行ってみた。
堺筋沿いの「スーパー玉出天下茶屋店」すぐそばって教えられたが、いや俺はその「玉出」には割とよく行くんだけど喫茶店とかあったっけ、と思ったんだけどあったわ。
今まで「玉出」の向かいのレンガの壁、くらいにしか認識してなかった「コーヒーショップ伊吹」。
改めて外観を眺めると、目立つ看板はなくメニューとかのディスプレイもなく喫茶店だと認知できていなかったんだが、ここが素敵なコーヒー店だと気づけていなかった自分の臭覚の未熟さを残念に思ったね。
外観はレンガの壁に見えるのねくらい特徴しかないのと比べ、店内は独自性しかないという様相。
狭い、長い、席も椅子も小さい。
なんだか昔の列車の食堂車みたいな狭さと長さだね……って、いや食堂車のほうがゆったりしているだろう。
壁に接合されている無骨なテーブルが、良い。
ぜんぜん行ったことないが昔の共産圏のカフェって感じだろうか、知らんけどそんな風に思えた。
コーヒーをいただいた。
メニューが少なく何を注文しようか迷いようがないのだが、もとよりコーヒーを飲みに来た。
濃い、漆黒で焙煎が深い、濃いコーヒー。
深い苦味と、それだけなく予想外の爽やかな酸味もあった。
俺は苦くてロースト感の強いコーヒーが好きなんだが、これはもう最上級に好みだ。
さて、でも少し困った、ソーサーには角砂糖が2個。
コーヒーに砂糖を入れる習慣はないので、要らないなぁと思ったんだけどソーサーの上に裸の角砂糖だ。
卓上にシュガーポットが置かれているのなら使わなければ済むし、スティックシュガーとかでも同様だ。
だが剥き出しの角砂糖は、俺が使わなければ衛生的な観点から廃棄されると思えて、それは勿体ない。
これは使うべきかと考えたが、せっかくの濃く深いコーヒーに砂糖を入れてしまうのか……と葛藤した。
意を決して砂糖を使い、ひとくち飲むと身震いするような感覚があった。
奥行きのあるコーヒーの味わいと香りに甘さが足されたことで、カフェインと糖分で脳味噌がブーストされたようにハイになる完備な高揚感。
キマる、って感覚。
こうれば、ままよ、ミルクも投入。
まろやかさという肌触りも加わった。
コーヒーについての言葉でシャルル・モーリス・ド・タレーラン(フランスの外交官だったそうで)による、有名なアレがあるよね。
“悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純粋で、愛のように甘美である。”ってやつ。
まさに、それだ。
いや地獄のように熱くはなくて適切な温度で提供されたけどね。
素晴らしいコーヒーを飲むことができた、390円で。
安いよね。
ちなみに店内に灰皿が見当たらなかったので“ここって禁煙ですか”と訊いたら“喫うてくださいよー”との返答。
だからといって灰皿は出されなかったのだが、俺は携帯灰皿をいつも持ってるから問題なく喫った。
もう一声“灰皿貸してもらえますか”って言えば良かったのかな。
ここのコーヒーは、また飲みたい。
この先もう、脳裏から消えることのないようなコーヒーだ。
この店に行ったのは2020年10月19日
↓「食べログ」での店舗情報
コーヒーショップ伊吹 (喫茶店 / 今池駅、今船駅、萩ノ茶屋駅)