そこで、三ノ輪に行ってみようと思った。
三ノ輪駅は日比谷線で上野の次の次という近さ、行ってみようと思ったのは台東区根岸「鈴木酒飯」。
昼から角打ちできる酒屋だという情報を拾っていたので、時間があれば立ち寄りたいと思っていたのだ。
上野から、とてもざっくり言えば日暮里や北千住方面へ向かうんだという地理的認識で、なんだか昔ながらの下町っぽいイメージを抱いていたが、駅から地上に出てみれば三ノ輪はフツーに小奇麗な町だった。
また「鈴木酒飯」も年季の入った古びた酒屋を勝手に想像していたが、なんだか洗練されていた。
すっきりと、いろいろな酒が陳列された店内。
酒蔵の名前が染め抜かれた前掛けが飾ってるのが趣きがあるが、と同時に此処では美味しい酒が買えると期待させる売り場構成だなと感じた。
それはまた、逆に言えば昼間っからオッサンが角打ちしてもいいのか、とも思わせる空気でもあった。
昼間っから角打ち目当てに訪れた俺というオッサンは、やや気後れした。
だが角打ちコーナーはあり、立ち飲みカウンターは誂えてあった。
それはつまり、飲んでもいいよってことだわな。
もっとも、俺が立ち寄った土曜の15時台後半に、角打ちしている客は一人もなかったのだけどね。
店内に酒蔵の前掛けが飾ってもあったし、角打ちコーナーでもいろいろな日本酒がプッシュされていた。
なら俺もポン酒を飲むわなぁ。
若めの男性店員か店主か、が一人いて、一杯飲みたいのだがオススメはと訊いた。
神奈川の「いづみ橋」という酒をいただいた。
くさやチーズなる、これはいかにも東京でなければお目にかかれないなというアテもあったが、注文はせず。
それは何故かというと、俺はまだ生まれてこのかた未経験なんだ、くさや。
だから、それを注文してみるのはとても無謀な冒険に思えたので、躊躇してしまったからというのもある。
それからまた、アテを注文してゆっくり酒を飲むという空気ではなかったからだというのもある。
角打ちコーナー的なものはるが、あくまで試飲の範疇で、という空気を俺は感じた。
買う前に試してみるため、という文脈で店内で飲んでいただいてます、というような。
酒を飲むのを目的に酒を飲みに来られるのは本意ではない、というような。
この店で角打ちができるようだという情報をネットで拾った際、それは個人のブログだったか、楽しげに酒を飲んでいるような画像が添えられていたように記憶しているが。
思い起こせば、それは3人だか4人だかで訪ねて、内輪で盛り上がっていたのだろうな、と。
そういう様子を鵜呑みにして、ネット上の断片情報だけを頼りに、何処にでも不躾に訪ねていくものではないなと考えを改めなきゃな、と思った。
どこに行っても自分のペースで飲めると思い込みがちだったなと、反省したよ。
角打ちってのは、特にそうだよな。
軒先をお借りして飲ませていただく、という気持ちを忘れないようにしなきゃって思った。
↓「食べログ」での店舗情報
鈴木酒販 (日本酒 / 三ノ輪駅、三ノ輪橋駅、荒川一中前駅)