2015年12月6日の朝、時刻はまだ8時前。
俺は東京都港区新橋で、店を探していた。
俺が探すってのは、それはだいたい飲み屋なわけなんだけど、そのとき探していたのは飲み屋と言ってもいいのか、という変わった店。
GoogleMapsを頼りに、ようやく探し当てた。
「ベンダースタンド酔心」、そこが目的の場所だ。
ビルの一階にあって、ビルのエントランスには「LIQUOR SHOP酔心」との表記もある。
ならば、酒屋ってことか。
うん、確かに酒は売っているよ。
自動販売機でね。
そう、ここは自動販売機スタンドとでも呼ぶべき無人の店なのだ。
自販機で売ってるのは缶の飲料だけじゃないよ。
瓶ビールもあるのが渋いね。
そして売ってるのは酒だけじゃないよ。
食いものもあるよ。
高速道路の古いサービスエリアとかで見る、あの自販機があるようだ。
ワッフルみたいなシャレたものも、ちょっと高級な缶詰だってある。
酒も食いものも、なかなか豊富に揃うってわけだ。
じゃあここで飲めるじゃないか。
うん、そうなんだ。
ここで買って帰るんじゃなくて、買ってすぐここで飲める。
店内の様子をご覧ください。
立ち飲み用のカウンターが用意されてるのよね。
フラっと立ち寄って、自販機で酒とアテを買って、そのまま飲酒開始。
店内は空調されており、なかなか快適だ。
そして重度の喫煙者である俺にとって必要な灰皿も、ちゃんと用意されている。
また、酒を飲んでて排尿したくなったとしても安心の、トイレもある。
たぶんビル共用部分のトイレだと思うが、店内からそのままアクセスできる。
なんかもう、至れり尽くせりって感じなんだ。
もう、なんでも揃ってるなって感じ。
さて、自販機があるだけの酒を飲むスペースといえば、有楽町の「食安商店」を思い出す人もいるかもしれないね。
そちらも楽しい自販機立ち飲みスポットであるが、快適さでは「ベンダースタンド酔心」が勝ってるなと俺は思うね。
吹きっさらしではなく、天井があって壁がある。
いや「食安商店」にも天井も壁もあるが、通りに面してオープンエアーな造りだから風はしのげない。
雨はしのげるが、横殴りの雨なら濡れるだろう。
だが「ベンダースタンド酔心」には、そういう心配は無用だ。
雨も風もしのげる。
おまけに暑さも寒さもしのげるのだ。
なんという快適さ。
ま、「食安商店」は、こんな道端みたいなところで飲むなんて、どんだけアルコール依存なんだよって自分で思っちゃう楽しさがあるのだが。
あくまで、通りすがりにこんなところで飲んじゃいましたって感じかなって思う。
こちら「ベンダースタンド酔心」は、わざわざ此処を目的地として足を運ぶっていう感じがある。
アルコール依存者どもの、オアシスのように感じるのよね。
あそこに行けば、救われる。
朝っぱらから、救われる。
俺が立ち寄ったとき、先客も後客もあって、いずれも独りだった。
皆、店内の誰とも口をきいたりしてなかった。
まぁ自販機オンリーなので店員との会話ってのはないとして、他の客との触れ合いとかも、まるで皆無だ。
それが、良い。
自分だけが自分を救うことができるんだ、酒を飲むことによって。
そんな、ナイフエッジな孤独と救いが、此処にはある……なんてな。
いやいや調子にのってカッコイイ風な戯言を書いてしまった。
ま、あれよ。
いつでも独りで外界から遮断されて飲めるよってのが、ここの醍醐味だぁね。
こんなところに通うようになって俺も終わってるよな、なんて自虐を楽しむのにも良い。
すごく好き、「ベンダースタンド酔心」。
「ベンダースタンド酔心」東京都港区東新橋2丁目5-14