2015年の12月06日の夜、俺は横浜でウロウロしていた。
飲み歩く目的で横浜へ来ていて、この夜の目当ては野毛で飲み歩くことだった。
横浜市中区の野毛町は、桜木町駅から歩いてすぐの便利なアクセス。
住所的には野毛町なんだが、一般に野毛と呼ばわる印象で、たとえばチェーン展開の飲食店の名称も『◯◯野毛町店』ではなく『◯◯野毛店』となっているのがほとんどじゃないかな。
そして野毛は、ディープな飲み屋が多い町として知られている。
知られている、よね? 俺はそういう感じに捉えてたけど、間違ってないかな?
とにかくこの日の俺は、ディープな飲み屋を求めて野毛を訪れたんだよ。
でも実際は、なんか観光地っぽくない?
いや観光地というか、あからさまに観光客向けって様子の店が多くない?
あと、若者向けのチャラい店も多くない?
大阪の新世界にはカップルや家族づれが人気店に行列してるのが珍しくなくなってたり。
新宿のゴールデン街で外国人観光客の団体がやたらと目についたり。
そんな感じの、俺にとってガッカリな印象を深く受けた。
ま、俺がディープな路地裏なんかを嗅ぎつけきれなかっただけ、かもしれないけどね。
そういうわけで、やや途方に暮れつつ野毛をウロウロしていた。
そんなとき、心惹かれる外観の店が目にとまった。
野毛町1丁目の静かな街角にたたずむ「旧バラ荘」。
ん? 「元バラ荘」?
いや「旧バラ荘」でいいのか?
ま、どっちでも読めば音は同じ「もとばらそう」だな。
エントランスは店舗っぽいが、建物自体は昭和のアパートって雰囲気もある。
いやエントランスも昭和の造作だよね、タイルなんか使ってあってね、ノスタルジック。
看板に『オーシャンバー』とあるのも昭和だなぁ、今ではすっかりオーシャンウイスキーって聞かないもんね(メルシャンに買収されキリンに買われていちおう名前は残っている)。
店内は薄暗く、穴倉のようで、それが隠れ家っぽい雰囲気がある。
カウンターの上は雑然としていて、その散らかり具合も秘密のアジトって空気だな。
缶ビールと、チャームで乾きもの。
アルコールの品揃えがどうこうって店ではないらしく、ビールも缶で出すってのがざっくりしていて、そういうの嫌いじゃない。
本やフライヤーが、やはり雑然と沢山あった。
フライヤーはライブとか芝居とかイベントのもので、アングラ感が漂う。
そして、アングラといえば、俺の実感としては左翼寄りの思想と縁深い。
アングラなテント芝居というのも、だいたいそういう思想が通底してるよなって印象が、何本かの芝居を観た経験から実感としてある。
この店に置いてあるフライヤーのなかに、左翼寄りの集会を告知するものもあったな。
俺は思想、ポリシーというものがよくわからない。
ビールを飲んで、お暇した。
ところで話は変わるが、野毛には都橋商店街という、2階建ての長屋みたいな飲み屋街が川に沿ってある。
野毛と、隣町の宮川町にまたがって、異様に魅力的な存在感を放っている。
ここにも訪れたい店があったんだけど、目当ての店は休みのようだった。
気まぐれで予備知識のない店に飛び込んでみようかと思ったが、どうもいまひとつ気が進まなかった。
ロケーションは、ものすごく素敵なんだけどねぇ。
どうも野毛は、俺には合わないのかもしれないなぁ、なんて思いつつ別の町に向かった。
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