劇場の東側で、あまり立派な外観でない昭和っぽい雰囲気の居酒屋が角っこにあるのに目が止まった。
「おれんち」という居酒屋で、韓国料理も出すようだ。
店先に張り出してあるメニューを眺めると、高くもなく安くもなくという印象だが、ほろよいセットというのがある。
好きな酒を2杯と小鉢で980円か、それほど得だとも感じなくて微妙だなってところだ。
しかしまぁ、ほかに何処かと物色して劇場から離れるよりも、ここにしとくかと店に入った。
狭く、ほぼカウンター席だけの店で、雑然としている。
奥に小さな小上がりがある。
屋号から、おじさんがやってる店かと思ったが、女将さんが迎えてくれた。
ほろよいセットをお願いしつつ、小鉢は何があるのか訊いた。
なんだったか忘れたが苦手な品だったので、代替案をお願いすると、破竹とグリーンピースの煮物を出してくれた。
それと、ビール。
ビールは好きじゃない銘柄だったが、こちらに代替はなかったので、受け入れるしかない。
液晶じゃないテレビで野球中継が流れていて、常連客が監督の采配を批判しつつ熱く観戦していた。
俺は野球にまったく興味がないが、野球中継とファンの野球評論家っぷりというのは、飲み屋のBGMとしては嫌いではない。
二杯目にハイボールを。
ほどなく野球評論家は試合の行く末を見限って、帰った。
女将さんが、もうすぐ大将が来るから、そしたら本格的な韓国料理が出せるからと案内してくれた。
屋号にある“おれ“こと大将は韓国の人だそうで、たぶんランチ営業のあと夕方の仕込みを終えて一休みといったところだろうか。
気さくな女将さんと世間話などしながら、ほろよいセットはもう消化してしまったが、もう一杯飲もうかどうしようかと考えた。
友人を待つ間にと寄っただけなのに、なんだか尻に根が生えてきたようだ。
そうか、韓国料理を出すしマッコリあるんだな、ずいぶん飲んでないし久しぶりにとマッコリを注文。
うん、うまいねマッコリ。
結局のところ、この店で友人と合流した。
関東から来ているから博多ならではみたいな店にお連れしてとか考えていたけども、いいよな此処で。
それに博多っぽいメニューがこの店にもある。
アラの刺身、サバ味醂。
こうなるともう、俺はポン酒だな。
大将は既に登場しており、料理の腕を振るっていた。
腕を振るっては小上がりの端に腰を下ろして酒を飲んでるようだった。
言葉数は少なくシャイな様子だが、人好きのするオッサンだった。
見知らぬ常連客も会話に交じり、なんかもう陽気な宴会の様相を呈してきた。
女将さんはなにかしらアテを出してくれてポン酒もすすみ、もう当初の“ここでいいか”的に消極的選択で店に入ったことなどさっぱり忘れ去っていた。
ちゃんと韓国料理も食ったな。
プルコギ、甘辛くてうまかった。
街角にある庶民の飲み屋って感じで、よかったな。
立派な博多座の傍で、そこだけ庶民って空間だ。
↓「食べログ」での店舗情報
居酒屋おれんち (居酒屋 / 中洲川端駅、呉服町駅、祇園駅)