近鉄電車を乗り継いで奈良から三重を経て、名古屋。
朝08時台に部屋を出て、名古屋市中村区のホテルに着いたのは18時ちょっと過ぎ。
まぁ何度も途中下車して寄り道したにしても、だいぶ時間がかかったなぁ。
名古屋に来た目的は酒を飲むことじゃないんだけど、来たんなら飲むでしょう。
チェックインしてひと息ついて、さぁ酒場へ。
名古屋って街灯が少なくないか、暗いなぁと思いつつとぼとぼ歩いて辿り着いた「天徳」。
市営地下鉄桜通線太閤通駅からも東山線中村日赤駅からも歩いて10分前後、周辺は静かで寂しい。
しかし、そ、の店構えを目にすると、来るべき価値があったと感激するほどの魅力しか感じない
古びているからこその味わい、経年による色気のようなものが抑えきれずに香っている、といった風情。
作為的に狙った“レトロ”なんかには絶対に出せない風格がある。
店先のボードもね、特級とか一級とかって日本酒の等級区分があった時代から、ずっと使ってるんだね。
まずビール、キリンラガー瓶があって嬉しい。
灰皿もある。
というか、キリンラガー瓶も灰皿もあって然るべし、だ。
こんなにも“これぞ昔ながらの酒場”という店にキリンかサッポロの瓶ビールと灰皿がなかったら嘘だ。
外観も素敵だが、店内もまた“これぞ場末の酒場”という風情。
カウンター席は少なめ(6席だか7席とか)だが、小上がりは広くて宴会とかできそう。
まぁ俺はカウンターが良いけど。
店は女将さんが一人でやっている……と思うんだが、なにかとサポートに励むおばちゃんも。
客なのか店の人なのか微妙に判断できない立ち位置の、やけに元気でフレンドリーなおばちゃん。
カウンター内の女将は、物静かな人。
客層は近所に住んでる常連ばかり、かと思ったらそうでもなくて、一見っぽいカップルも。
あとから来た爺さん客が、隣の咳で絶え間なく延々と咳をしていて、さすがに席を移って距離をとった。
コロナだか風邪だか、なんにせようつされたらかなわん。
こうした配慮のない客がいるのも、これまた場末という感じだ。
酒のアテになるものは、作り置きの惣菜の他にも魚介を中心に、いろいろ。
おしなべて、お値段控えめで、激安ではないが躊躇せず注文できちゃう価格帯って印象。
ぶりテリヤキ380円也、濃い味付けで酒をすすませる。
日本酒、二級大450円也、安いよ大で450円だよ小なら230円だ。
名古屋については、昼から酒を飲む店に乏しい昼酒砂漠だと認識している。
そしてまた大須とか極端だが、飲み屋が閉店する時刻が早すぎる“夜が早い”街だと思っている。
総じて、名古屋あんまり面白くはねぇよなと思っていたわけだが、いやいやいや。
この「天徳」は素晴らしい。
なかなか、こういうのないよ。
この店があるだけでも名古屋は侮れねぇな、と思った。
もっと他にも素晴らしい酒場があるのかもしれないと考えた。
だから、この店が俺の名古屋に対する評価を変えたかもしれない。