神奈川県は、たぶんまだ20代の頃に訪れて以来かな。
その頃は、横浜に外人がたむろするようなバーを求めていた記憶だが、いまは違う。
中華街にも行ったが、いまは興味がない。
みなとみらい……そういうオサレなスポットは苦手だ。
じゃあ何を求めて行ったのか、酒飲みのオマエのことだから、野毛で飲み歩きか?
そう推理する親愛なる読者様もいらっしゃるかもしれないが、ちょっと違う。
阪東橋という駅の辺りに、角打ちできる酒屋が何軒も集まっているという情報をネットで拾っていて、それは行ってみたいなぁと思ってのことなんですな。
そういうわけで、さっそく阪東橋へ向かっても良かったが宿泊予約をしたホテルに荷物を預かってもらおうと思った。
酒屋の角打ちスペースってのは狭いことが多いから、荷物をかかえていると他の客や店に迷惑になる。
で、ホテルの場所は伊勢佐木町の近くだった。
そして伊勢佐木町には「甘粕屋酒店」という角打ちできる酒屋があると下調べをしていた。
阪東橋へ行く前に、まずはそこに寄ろう。
「甘粕屋酒店」は、ちょっとした地元の商店街って雰囲気の通りにあって、小綺麗な印象の酒屋だ。
店先で、店内のカウンターで飲める旨の案内があって、イエス角打ち。
さっそく店に入ると、販売スペースとは区切られて左手に角打ちスペースがあった。
時刻は11時前、角打ちの先客はなかった。
おお、ポン酒がいろいろ飲めるんだなぁ。
うん、どうせなら神奈川県の酒が飲みたいな。
店の人に訊くと、神奈川の酒は量り売りで出してなかった。
それで、「秩父錦 生囲い」というのを一杯、400円也。
秩父……埼玉だな、ま関東の酒ってことで、いいか。
さて、角打ちコーナーはそこそこスペースがあって、酒の案内など張り紙も賑やかに、角打ち客に対してウェルカムな雰囲気が演出されているように感じた。
が、俺の注文した酒を出してくれた店の人は、“あー、○○注文しとかなくちゃ”みたいな独り言をしきりにつぶやきながらそそくさと販売スペースに戻っていった。
そりゃまぁ、やるべき仕事はあるだろう。
それに俺は酒屋の角打ちで、フレンドリーな接客を必ずしも求めてはいない。
酒を出したら放置されても一向に構わないのだ。
だが、なんかこう独り言をやたらつぶやかれると“話しかけるなよ? 絶対に話しかけるなよ?”ってオーラを感じてしまい、正直なところ居心地は良くない。
ま、神奈川で角打ちするのは初めてだし、こういう土地柄なのかしらん、と思った。
また、午前中から飲酒することに否定的な風潮がある街なのかもしれないな、とも思った。
いや、ただ単に髭面の見知らぬオッサンがフラリと現れたので、警戒されたのかもしらんね。
酒のアテなんかもあるようだったが、まぁ目の前の酒を飲み干して阪東橋のほうへ行こう。
とりあえず、神奈川にも角打ち文化ありと確認できたので良し、としておこう。
↓「食べログ」での店舗情報
甘粕屋酒店 (立ち飲み居酒屋・バー / 黄金町駅、阪東橋駅、吉野町駅)