そんな鏡張りのオシャレな建物「THE VILLAS」。
土日や祝日には店先に着飾った女子や男子がたむろしているので、たぶん結婚披露宴パーティとか何かのパーティとかやってる建物なんだろうなと想像していて、まぁとにかく俺はたぶん死ぬまで足を踏み入れることはないだろうと思っていたよ、こういう華やかでオシャレなところへは。
が、しかし。
“STANDING BAR OPEN”だって?
立ち飲みできるのか……でもお高いんでしょ?
“DRINK ALL 300yen”だって?
マジかよ。
洒落た店に入るのは勇気が要るのだが、安く飲めるんなら入ってみねばなるまい。
たいしたことのない安さなら洒落てるのは苦手だと諦めるところだが、300円というのは洒落た店に足を踏み入れるという冒険を決断させる安さだ。
入ってすぐ、ソファの置かれたフロア。
なんかもうセレブリチーな方々が談笑するためにあるようなスペースで、もはやドキドキする。
床さえピカピカなんで緊張する。
このとき、ソファでくつろぐセレブリチーは居なかったので良かった……もし居たら引き返したかもしれない。
奥に、目指すスタンディングバーがあった。
立派な立ち飲み席だなぁ。
向こうに厨房が見えるが、多くのスタッフが忙しそうに働いている。
カウンターには沢山の酒が綺麗に並んでいる。
バックバーにはズラリといろんな酒が。
あ、カウンターにはモエが並べてるな、高級感が俺を怯ませるな。
こんなところで、本当に300円で酒が飲めるのか?
スタッフが迎えてくれてスタンディングバーに立つ。
この席では300円で飲めるのか訊くと、飲めますとのこと。
間違いない、本当に300円だ。
凄いな、スパークリングワインも300円で飲めるんだ。
カクテルもあるな。
生ビールを注文した。
そして予想外に、タバコは喫うかと訊いてくれた。
こんな洒落た店では喫煙に違いないと思い込んでいたから、驚いた。
世界は思ったほど厳しくはないんだと感じた。
ビールを飲んで気持ちに余裕がでて店内を見渡すと、なんだかオシャレな階段があった。
上のフロアはパーティ会場かなんかだろうか。
ビール1杯300円で会計して帰るのも恥ずかしいかもしれん、貧乏人だと思われるかもしれん(実際に貧乏だが)などと卑屈なことを思い、カクテルを注文してみた。
ジンリッキー。
氷は製氷機のものだが、文句なんかない300円だし。
値段以上に美味しいジンリッキーだった。
この店、というか飲んでる場所が「THE VILLAS」なのではなく、「THE VILLAS」というウェディングとかパーティに使える施設の「in the PARK」というレストランバーで俺は飲んでいたんだなと、あとで確認した。
俺が立ち寄ったのは金曜の夕方で、他に利用客は少なかったから、あまり普段使いされる店ではないのかな。
もっとも夜になったらパーチーピーポーが団体で訪れるのかもしれない。
土日祝の昼なら、披露宴のアフターでバーも賑わうんだろう。
会計をお願いすると、ジャスト600円。
税込みなんだ1杯300円って。
すごいじゃないか。
俺は、お洒落な店というのを過剰に敬遠し過ぎていたかもしれないと考えた。
オシャレだという利用だけで、気持ちよく使える店との出会いを逃していたのかもしれない。
これからはどんどん、オシャレな店へも踏み込もうと思う。
調子に乗ると痛い目にあるかもしれないけどな、たとえば“当店では冴えないオッサンの入店はご遠慮いただいてます”とか言われてさ。
↓「食べログ」での店舗情報
ザ・ヴィラズ (ダイニングバー / 西鉄福岡駅(天神)、赤坂駅、天神南駅)